二世帯住宅は安心・便利な一方、プライバシーの確保や生活費の分担など、気を遣う部分があることで、それがストレスになることもあります。このような二世帯住宅に特有のストレスが心配な方には、「完全分離型」の二世帯住宅がおすすめです。
そこでこの記事では、完全分離型をメインに、二世帯住宅の間取りの特徴などについてご紹介していきます。
目次
二世帯住宅とは
まずは、そもそも二世帯住宅とはどのようなものなのか解説します。
二世帯住宅の定義
二世帯住宅とは、2つの世帯が同じ建物内に住むことを前提としてつくられた住宅を指します。
親世帯と子世帯が一緒に生活することが多いですが、異なる場合もあります。
二世帯住宅と同居や近居の違い
二世帯住宅を検討していると、同居や近居といった言葉を聞くことがあるかと思います。
二世帯住宅とは、2つの世帯が暮らすための住宅のことです。一方、同居や近居は暮らすスタイルを表しています。
同居とは、別世帯がひとつ屋根の下で暮らすことを指します。そのため、二世帯住宅での生活だけでなく、一般的な住宅や賃貸での共同生活も含みます。
近居とは、すぐに行き来できる近所に住宅を構え、日常的にコミュニケーションを取りながら暮らすスタイルです。
二世帯住宅の完全分離型とは
二世帯住宅は、間取りによって大きく3タイプに分けられます。そのうちの一種が完全分離型となります。
ここから、間取りの特徴などについて解説していきます。
二世帯住宅の間取り
■完全同居型
生活に必要な設備や部屋を、2つの世帯で共有する間取りです。
そのため、玄関、リビング、キッチン、浴室などは、いずれもひとつずつとなります。加えて、同居する人数に合わせた寝室を設けます。2つの世帯が日常的に交流できるため、一緒に暮らしているという感覚をもちやすいのが特徴です。
■部分共用型
2つの世帯の生活空間を適度に分ける間取りです。
玄関のような一部の設備のみ共有し、リビング、キッチンなどの空間は世帯ごとにそれぞれ設けます。一緒に生活しながらも、ある程度プライバシーを確保したい場合に向いています。
■完全分離型
親世帯と子世帯の生活空間を完全に分け、全く別の世帯として暮らせるようにした間取りです。
玄関を含めたすべての生活スペースを世帯ごとにそれぞれ設けます。マンションの隣同士で生活するようなイメージです。別々に生活してプライバシーは確保しつつ、近くにいるので安心、という「いいとこどり」ができるのが特徴です。
※各タイプのメリット・デメリットについてはこちらのコラムでも解説しております。
二世帯住宅の間取りのポイント
二世帯住宅の間取りで失敗しないための重要ポイントを5つ解説します。
■プライバシー
二世帯住宅では2つの世帯が共同で暮らすため、プライバシーをどのように確保するかがとても大切です。特に、世帯によって活動する時間帯が異なる場合、小さな物音でもストレスに感じてしまうかもしれません。
■介護
建築時点で親世帯が元気だとしても、将来的には介護が必要になる可能性があります。二世帯住宅を建てるときは将来を見通して、バリアフリー化など、設備や間取りを検討しておきましょう。
■子育て
小さな子供がいるご家庭では、子育てしやすい環境づくりも大切です。スムーズに子供の世話ができるよう、部屋の配置を工夫しましょう。また、段差を減らして転倒などのトラブルが起きないように配慮すると良いでしょう。
■家事分担
完全同居型や部分共用型の場合は、両世帯で共有する設備があるため、家事を分担しながら作業しなければならない場面も出てきます。そのため、それぞれの世帯の生活スタイルも考慮しながら、協力して家事を進めやすいレイアウトを考える必要があります。
■経済的分担
二世帯住宅では、各世帯の光熱費を別々に把握するのが難しいケースもあります。水道、ガス、電気の使用量や料金を明確に分けて把握したい場合は、二世帯住宅を建てるときに配管やメーターなども分けて設置しておきましょう。あとから配管やメーターなどを分けるとなると、大掛かりな工事と高額な費用が必要になってしまうかもしれません。
完全分離型の二世帯住宅の間取り
完全分離型の二世帯住宅の間取りには、大きく分けて2パターンがあります。
それぞれのパターンと注意点を解説します。
横割り(上下分離)
横割りパターンの間取りでは、1階を親世帯、2階を子世帯にすることが多いです。
そうすることで、親世帯は足腰が弱くなっても階段の上り下りをしないですみます。更に1階をバリアフリー対応にしておけば、介護が必要になっても安心です。
注意点としては、2階に住む子世帯は、普段から足音や生活音に配慮する必要があります。
例えば、家族が集まるLDKの真下には1階の寝室は配置しない、排水音がする水回りの配置を上下で合わせる、といったような工夫をしておくと良いでしょう。
縦割り(左右分離)
居住空間を左右に分ける間取りです。一定の配慮は必要ですが、生活音がどうしても心配な場合は、縦割りパターンが向いているかもしれません。
ただし、縦割りパターンほうが建築コストは高くなりやすいです。
注意点としては、縦割りパターンの間取りでは、親世帯が高齢になると足腰の老化や荷物の少なさから、親世帯部分の2階を使わなくなってしまう可能性があります。
広い敷地があるのであれば、親世帯部分は平屋にして、子世帯部分だけに2階を作るプランもおすすめです。
完全分離型の二世帯住宅でありがちな問題と対策
完全分離型の二世帯住宅にはメリットが多いものの、問題がないわけではありません。
既にふれている項目もありますが、ここで問題になりがちなケースと対策について、まとめて解説していきます。
完全分離型の問題と対策
完全分離型二世帯住宅の税金・住宅ローン
完全分離型は、他の二世帯タイプと違う部分もあります。税金の優遇や住宅ローンの組み方について解説します。
完全分離型二世帯住宅の税金優遇
完全分離型は、他タイプの二世帯住宅よりも多くの税金優遇が受けられます。
ここでは、優遇される可能性のある税金について解説します。
※各地方自治体によって二世帯住宅の定義が異なる可能性があるため、二戸分と認められる要件は事前にご確認ください。
(1)不動産取得税
1世帯ごとに1,200万円(長期優良住宅なら1,300万円)の控除が受けられます。
二世帯住宅なら、控除額が2倍となり2,400万円の控除となります。
(2)固定資産税
■土地
家屋が建つ土地のうち200㎡までの部分が小規模住宅用地として扱われ、固定資産税の課税標準額が6分の1、都市計画税の課税標準額が3分の1に軽減されます 。
二戸分とみなされれば 面積が2倍の400㎡までが小規模住宅用地扱いになります。
■建物
新築の場合、住宅を建ててから3年間(長期優良住宅なら5年間)の固定資産税が、1世帯あたり床面積120㎡まで2分の1に減額されます。
二世帯住宅なら、面積が2倍となり240㎡まで減額されます。
(3)住宅ローン控除
2つの世帯それぞれが住宅ローンを組む場合、一定の要件を満たせば、それぞれの世帯で住宅ローン控除を利用できます。
(4)相続税
一定の条件を満たせば、二世帯住宅でも「小規模宅地等の特例」を適用して、土地面積330㎡までの評価額を80%減額でき、節税することができます。
ただし、二世帯住宅を「区分登記」している場合は「小規模宅地等の特例」が適用されない可能性が高いため、注意して下さい。
完全分離型二世帯住宅の住宅ローン
一般的に、完全分離型における住宅ローンの組み方で多い3つのパターンを紹介します。
・親世帯と子世帯はそれぞれローンを組む
・親世帯が頭金を支払い、子世帯がローンを組む
・親から子へ引き渡す形で返済する親子リレー方式のローンを組む
まとめ
完全分離型の二世帯住宅は、各世帯がプライバシーを保持しつつ共同生活を楽しむことができるなど、多様なメリットがあります。ただ、各世帯内だけでなく、世帯間でもしっかりと話し合っておかないと、後悔してしまうケースも多々あります。
二世帯住宅で満足して住み続けるためには、各世帯の生活スタイルや希望するコミュニケーションの取り方、相続などの将来的な部分まで話し合うことが重要です。
このように、二世帯住宅の計画は一般的な単世帯住宅より難しいと言えるでしょう。そもそも、どのように進めていけば良いのかわからない方も多いかと思います。そのため、両世帯それぞれの要望や意見をうまく引き出しながら、お互いが快適に暮らせる提案をしてくれる住宅メーカーを選ぶことをおすすめします。
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「栃木セキスイハイム」編集部
住まいの販売から土地活用でおなじみの栃木セキスイハイムグループが、家づくりの「わからない」にお応えします。建築士・宅地建物取引士など住まいの専門家による監修のもと記事の執筆を行っています。