住まいは生活の拠点であり、生活の質に大きな影響を与えるといえます。そのため、将来的な部分や快適性などを考えた際に、木造住宅にするか鉄骨住宅にするか、悩んでしまう方も多くいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、木造住宅と鉄骨住宅の違い、そしてそれぞれを比較した際のメリットとデメリットについて解説します。
目次
木造住宅とは
木造住宅とは、その名のとおり主要な構造部分に木材を用いた住宅を指します。
総務省の住宅構造の統計データ《平成30年住宅・土地統計調査》によると、日本の住宅の大半は木造住宅が占めており、馴染みのある方も多いでしょう。
木造住宅の工法
木造住宅で主に使用されている工法は「木造軸組工法」と「木造枠組壁工法」となります。
それぞれどのような工法なのか解説していきます。
木造軸組工法
木造軸組工法は、柱と梁で骨組みを築き筋違いや合板で組み上げる工法です。日本古来の「伝統工法」を現代的に簡略化した工法で、在来工法とも呼ばれています。
設計の自由度が高く、比較的間取りを自由にとりやすい工法であり、日本の新築住宅は木造軸組工法を用いるケースが多いです。
木造枠組壁工法
木造枠組壁工法は、ツーバイフォー(2×4)工法ともいわれています。北米由来の工法で、柱や梁を基礎にするのではなく、2インチ×4インチのパネル状になった木材を組み立てて建築する工法です。柱などの線ではなく、面で建物を支える構造体です。
木造軸組工法に比べると、間取りの自由度は下がります。その反面、品質や性能が安定しやすいと言えます。
木造住宅のメリット
木造住宅を採用するメリットを5つ解説します。
断熱性や調湿性が高い
木は断熱性や調質性が高いため、四季のある日本の風土にも適した家が建てられます。
木材には細かい空隙が無数にあるため、その中に含まれている空気が熱を遮ります。更に、細胞壁と空隙は湿気を吸収・放出する役割も担っているので、湿度を自然に調節することができ、結露やカビの発生を抑える効果が期待できます。
環境にやさしい
木材は持続可能な資源であり、苗木を植えることで再生産できるほか、建設や加工工程においてCO2の排出量が少ないことなどが特徴として挙げられます。さらに、木は大気中の二酸化炭素を吸収固定するため、温室効果ガス削減にも貢献できるでしょう。
建築費用を抑えられる
ハウスメーカーにもよりますが、鉄骨住宅に比べて材料費が安いため、建築コストも安い傾向にあります。ただし、木材にはさまざまな種類があるため、質のよい木材を多く使うと鉄骨住宅よりも高額となる場合もあります。予算に合わせて、使用する木材を検討するとよいでしょう。
建物が軽い
木造住宅は、鉄骨住宅に比べて建物を軽くできます。建物が軽いほど地盤へかかる負荷が少なくなるため傾きも発生しにくくなります。そのため、鉄骨住宅に比べて地盤補強工事が必要になりにくいといえるでしょう。
火災時に倒壊しにくい
木は燃える時、表面が炭化するので、中心の芯の部分までは火が届きにくいです。このように、芯が残ることで強度が低下しにくいため、倒壊しにくくなります。
木造住宅のデメリット
木造住宅のデメリットを4つ解説します。
品質にバラつきやムラがでる
木材は自然から作成する材料のため、材料に品質のばらつきが生じます。
また、建築中に雨ざらしにしてしまうと品質が低下します。雨が多い日本では、建築現場での管理が大変重要です。
仕上がりが職人の腕に左右される
木造住宅は現場加工が多い傾向にあり、施工品質は職人依存度が高くなります。
職人の技術によって品質が変わってしまうのです。そのため、性能や品質は完成後の数値で確認することをおすすめします。
腐朽や蟻害への対策・配慮が必要
木材は鉄鋼と違い、シロアリや腐朽菌によってダメージを受けます。
日本の高温多湿の環境において寿命を延ばすためには、定期的に床下をチェックする、防虫処理を行うなど、鉄骨造住宅よりも慎重に対策することが必要です。
資産価値が低くなりやすい
鉄骨住宅と比べて劣化のスピードが速いため、平均して資産価値が低くなりやすいです。
ただ、その反面、固定資産税は安くなるというメリットがあります。
鉄骨住宅とは
鉄骨住宅とは、住宅の主要な部分である柱や梁に鉄骨を使っている住宅を指します。「Steel」の頭文字を取って「S造」と記載されることもあります。
鉄骨住宅の種類
使用する鉄骨には軽量鉄骨と重量鉄骨の2種類があります。
鋼材の厚さが6mm未満のものを軽量鉄骨、6mm以上のものが重量鉄骨となり、それにより軽量鉄骨造、重量鉄骨造といった呼び分けがされています。
軽量鉄骨造
一般的にハウスメーカーの一戸建て住宅では、軽量鉄骨造が採用されています。
建て方としては、軽量鉄骨で骨組みをつくり、対角線をつなぐ筋交(ブレース)で補強し、ボルトで連結して組み立てる「軽量鉄骨ブレース工法」が多く用いられます。
重量鉄骨造
マンションや大型デパートの建設には、主に重量鉄骨が用いられます。
建設にあたっては、ボルトで連結していた部分を溶接して連結し、額縁のような枠で組み立てていく「重量鉄骨ラーメン工法」が多くのケースで採用されています。筋交や耐震壁が不要のため、広い空間を作り出すのに適しています。
鉄骨住宅のメリット
鉄骨住宅ならではのメリット5選を解説します。
品質が安定する
鉄骨は、工場で生産されるため品質にバラつきが生じにくい材料です。
建築時も、一般的には工場であらかじめ組み立てる「プレハブ工法」を用いるため、現場加工が少なく、職人による当たり外れも少なくなります。また、工期も短くなるため、天候の影響も受けにくくなることで品質を確保しやすいと言えます。
大空間・大開口の間取りが実現できる
鉄鋼は木材よりも強度が高いため、柱と柱の距離を大きくとることができます。そのため、広々したリビングや大きな吹き抜けなど、開放的な間取りを実現できるでしょう。
強度が高く粘り強い
鉄鋼と木材では、材料の強度や弾性を表す指標であるヤング係数が大きく違います。
鉄骨住宅は、鉄や鋼の「粘り」によって地震に耐える構造になっています。地震で力が加わったとしてもその粘りによってしなり、変形するため地震のエネルギーを吸収し、倒壊しにくいと言われています。
シロアリなどの害虫に強い
シロアリは湿った木に発生しやすい害虫です。そのため、鉄骨住宅はシロアリが発生する可能性を軽減できます。ただ、完全に木材を使用しない住宅建築は難しいため、シロアリ被害にあう可能性がゼロではないという事は覚えておいてください。
火災保険が安くなる
火災保険の保険料は、建物の柱の種類に着目して判定をおこないます。
住宅の場合は以下のように3つに分類されており、下に行くほど保険料が高くなります。
【M構造】コンクリート造、れんが造、石造、耐火建築物の共同住宅など
【T構造】鉄骨造、コンクリート造、れんが造、石造、耐火建築物の共同住宅以外、準耐火建築物、省令準耐火建物など
【H構造】M構造、T構造に該当しない建物
一般的な木造は「H構造」、鉄骨造は「T構造」なので火災保険が安くなります。
鉄骨住宅のデメリット
鉄骨住宅のデメリットを3つ解説します。
断熱性が低くなりやすい
鉄骨住宅は、木造住宅に比べると熱伝導率が高く熱を通しやすいという特徴があるため、外気の影響を受けやすいです。
断熱材や窓などの仕様や種類について、しっかりと検討することをおすすめします。
火事で倒壊のおそれがある
木造住宅に比べて火が燃え移る心配は少ないですが、鉄は高温に弱い性質があります。
そのため、火事が起こると木造住宅よりも家屋の倒壊するスピードが早いともいわれています。火を使わないオール電化生活を考えてみても良いかもしれません。
錆びる
錆は鉄が空気と水の化学反応によって表面が「腐食」され起こります。
錆を防ぐために、どのような防錆処理がおこなわれているか必ず確認しましょう。
木造住宅と鉄骨造住宅の選び方
木造住宅と鉄骨造住宅には、それぞれメリットとデメリットがあります。木造住宅に向いている人、鉄骨造住宅に向いている人の特徴を解説します。
木造住宅が向いている人
●できるかぎりコストを抑えつつ個性的な家に住みたい
鉄骨造住宅よりも建築のコストが比較的かかりにくいため、その分を内装や外装、間取りにこだわることが可能です。
●環境に優しい家に住みたい
地球の環境問題も考え、低炭素社会に貢献したいと考えている方や健康に暮らしたいと考えている方に向いています。
鉄骨造住宅が向いている人
●初期費用が高くても長期的にコストを抑えられる頑丈な家に住みたい
木造住宅に比べると耐用年数が長いため、初期費用が高くても長期的に見ると費用を安く抑えられる傾向にあります。
●資産価値が下がらない家に住みたい
資産価値の下がるスピードが木造住宅に比べ緩やかなため、固定資産税が下がりにくく、税金の支払う額が多くなりますが、木造住宅よりも税法上、資産価値が落ちにくいです。
まとめ
建物に求められるのは「強さ(地震や強風に耐える)、耐久性 (長持ちする)、施工性 (高性能のものがつくりやすい)、安さ (コストパフォーマンス)」などさまざまです。
自分たちが家に求める優先順位を、建物の構造の違いによるメリット・デメリットと照らし合わせ、どちらが効率的に叶えられる構造なのか考えて選びましょう。
ただ、住まいの品質を決める要因は、構造の種類だけでなく、デメリットに対する対策や現場の管理体制など多岐にわたります。そのため、後悔しない家づくりのためには、トータル的に判断することがとても大切です。
運営者情報
「栃木セキスイハイム」編集部
住まいの販売から土地活用でおなじみの栃木セキスイハイムグループが、家づくりの「わからない」にお応えします。建築士・宅地建物取引士など住まいの専門家による監修のもと記事の執筆を行っています。