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COLUMN

耐震基準が改正されたのはいつ?耐震性と築年数は関係する?

2022.01.06

マンションや一戸建てなどの中古物件を購入するときに、「耐震性」は大丈夫?「築年数」は何年?など、気になる方は少なくありません。意外と知られていませんが、耐震性は建物の竣工日で判断できないのはご存知でしょうか。

今回は、旧耐震基準~新耐震基準の変遷を説明した上で、耐震性と築年数の関係性について紹介します。

 

 

耐震基準とは?いつ新耐震基準に改正された?

まずは、そもそも耐震基準とは何かを理解した上で、耐震基準の変遷についてご説明します。

耐震基準とは

耐震性能を示す指標には、「耐震基準」と「耐震等級」の2つが存在します。似たような言葉ではありますが、それぞれが異なる法規で定められている耐震性能の指標で、連動性のない要素です。

 

耐震基準とは、建築基準法や建築基準法施工令に則って定められた、建築する建物が最低限満たすべき地震への耐性基準のことです。そのため、耐震基準を満たしていない建物は建築確認の許可が下りず建築することはできません。

 

耐震等級とは、2001年に施行された「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」にて規定された耐震性能の指標です。耐震等級の条件とセキスイハイムの耐震等級については、こちらをご覧ください。

 

 >耐震等級とは?耐震等級1,2,3の違いを解説

 

耐震制度は2000年に改正

日本では、建築基準法の基となる市街地建設物法が1920年に施行され、1924年に市街地建築物法が大幅に改正され、初めて耐震基準が盛り込まれました。

建築基準法としては1950年に制定され、耐震基準は1971年、1981年、2000年と過去に3回大きな改正が行われました。

 

■ 1971年の改正

1968年に起きた十勝沖地震を踏まえたもので、鉄筋コンクリート造のせん断補強基準の強化が図られました。この地震では、住宅の倒壊による被害が多く、実際に600棟以上の全壊、15,000棟以上の建物が一部損壊する被害がありました。

こうした被害を受け、柱の強度についての改正が主たる内容となっています。また、木造住宅の基礎を独立基礎から、連続したコンクリートの布基礎とすることが規定されました。

 

■ 1981年の改正

1978年に発生し、甚大な被害を出した宮城県沖地震をきっかけに、建物の耐震基準が大幅に見直されました。

内容としては、一次設計の「許容応力度(外部から力が加わっても損傷を残さずに元の状態に戻れる範囲内にある応力の限界値)計算」と二次設計の「保有水平耐力計算」の概念が取り入れられました。一次設計では、中規模の地震に相当する、建物が支える20%以上の重さの水平力を受けても損傷しないことを検証します。

二次設計では、大規模の地震に相当する建物が支える100%以上の重さの水平力を受けても倒壊しないことを検証します。また、建物の高さや建物が建つ場所の地盤の性質などによる地震荷重の違いならびに建物のねじれを防ぐためのバランスを配慮した設計も求められるようになりました。

 

■ 2000年の改正

1995年に発生した阪神淡路大震災では、未曾有の被害となり、実際にビルが倒壊したり、高速道路の柱脚が倒壊し道路が横倒しになったりする被害がありました。この大地震をきっかけに、耐震基準がさらに見直されました。

内容は木造住宅に関するもので、鉄筋コンクリート造のマンションの耐震基準は大きく変わっていません。基礎は地耐力に合ったものと規定され、木造住宅でも事実上地盤調査が義務づけられました。また、柱や筋交いを固定する接合部の金物が指定されて耐力壁の配置のバランスも規定されました。

 

 

旧耐震基準と新耐震基準の違い

耐震基準は1971年、1981年、2000年と大きな改定が行われたことを説明しましたが、ここでは旧耐震基準と新耐震基準との違いについてご説明します。

旧耐震基準の内容

旧耐震基準とは、1950年から施工され1981年まで適用された耐震基準を指します。

旧耐震基準では「建物の自重の 20%に相当する地震力」に対して許容応力度計算を行い、構造材料の許容応力以下とする耐震設計法が定められていました。

 

つまり、旧耐震基準では震度5程度の地震が発生した際、「倒壊しない」ことを目的に基準を定められており、建物が倒壊しない程度の損傷を受けている可能性があるものでした。また、震度6以上の地震に対する基準は設けられていませんでした。実際、耐震基準改正のきっかけとなった宮城県沖地震では、宮城県仙台市をはじめとする各地域で最大震度5を記録し、死者16名、重軽傷者10,119名、住家の全半壊4,3850戸という大きな被害が出ました。

 

新耐震基準の内容

新耐震基準とは、1981年に制定され、震度6強~7程度の大地震でも建物が倒壊しないように定められた構造基準です。旧耐震基準の許容応力度計算に加え、保有水平耐力計算を行い、大規模地震時に発生する水平力に対し、柱や梁の曲げ降伏、せん断破壊を確認し、建物の保有する耐力が、必要とされる耐力を上回っているかどうかを検証します。

 

つまりは、地震力が加えられた場合の構造部材に生じる応力が許容応力以下であるだけでなく、靱性(粘り強さ)や建物強度のバランスも必要とされ、旧耐震基準の安全基準を大幅に強化したものとなっていました。

 

 

旧耐震基準と新耐震基準を確認する方法・ポイント

ここまで旧耐震基準と新耐震基準の違いについてご説明しましたが、売却物件の耐震基準や違法建築でないことを確認する方法・ポイントについて次でご説明します。

建築確認通知書を確認する

建築確認通知書とは、建築するに際し、提出した建築確認申請書に記載した内容が建築基準法に定められた規定に合致している事を確認した旨を特定行政庁から建築主へ通知する書面のことです。現在は、「確認済証」ないし「建築確認済証」というが、1999年に施行された改正建築基準法以前は、この書面のことを「建築確認通知書」と呼んでいたため、現在でもこう呼ばれることも多いです。

 

建築確認通知書は、新築を建てる場合には申請から3週間程度で発行されていますが、実際に書類を受け取るのは、完成した家の引き渡しの時であることが一般的です。発行段階では建築の依頼を受けた建築会社にて保管されています。

なお、この建築確認通知書についての各種の変更については、最初の建築確認通知書に押印した申請人の同一の認印で申請する事が要求され、同一の印が不明の場合は実印と印鑑証明書が要求されます。ちなみに、検査済証(建築完了時に検査を行い、建築確認申請のとおり、建築基準法に則って建物が建築されている事を証する書面)が発行されている場合は、建築確認通知書の記載事項の各種の変更は不可能となります。

 

また、建築確認通知書は様々な場面で提出が必要となる事があります。なぜなら、建築確認通知書は、物件が適法に建築された建造物であることを証明する書類であることから、不動産の取り扱いにおいてとても重要な役割を果たすからです。具体的な場面として3つ取り上げます。

・1つ目は、家を売却する場合です。売却物件の引き渡しが決定した際に対象の物件が違法建築でない証明を行うため不動産会社や仲介会社に提出をする必要があります。

・2つ目は、住宅ローンを申請する際です。住宅を担保にするとき、当初の計画通りに建てられた家なのかを判断するために金融機関へ提出する必要があります。

・3つ目は、家の増改築で確認申請を受ける場合です。確認申請を伴うリフォームや増築を行いたい際に必要となります。通常のリフォーム(フローリングやクロスの張替え)などには適用されないことが一般的ですが、新たに建造物が増えると判断される場合には確認申請が必要となります。

 

建築確認通知書(建築確認済証)は、原則的には書類の再発行を行うことができませんので、建物の引渡し後に受け取ったら厳重に保管し紛失を防ぐようにしましょう。

 

耐震性は竣工日では判断できない

まず、竣工日とは建物の建築が完了した日を指しています。

新耐震基準は1981年6月1日に施行されました。そのため、その日以降の竣工日である建物が新耐震基準なのか、というとそうではありません。なぜなら、建物の竣工日で新耐震基準か旧耐震基準かが決まるのではなく、「建築確認申請がいつ行われたか?」で決まるからです。

 

つまり、1981年6月1日以降に建物が完成していたとしても、建築確認申請の日付が1981年6月1日より前となれば、この建物は旧耐震基準の建物ということになります。

 

 

耐震性は築年数と比例する?

最後に、築年数と耐震性の関係についてご説明します。よく築年数が古い=耐震性が心配と考えられる方も多いですが、その考え方は適切ではありません。住宅選びが心配な方は、建築士など専門知識を持つ有資格者のご意見を伺うことも一つの手です。

家のつくり次第では築年数が古くても耐震性に優れている

日本で一番建てられている木造住宅は工法がいろいろとあります。耐震性を重視したい方に推奨されている工法は、建物を揺らして力を逃がす「在来工法」か、もしくは面で受け止めて揺れを抑える「ツーバイフォー工法」となります。

 

中古住宅を探す際、新耐震基準をもとに建てられた家でも「古いから耐震性が心配」と不安に思う方は、新耐震基準をクリアしていて、なおかつ「在来工法」「ツーバイフォー工法」の家を選ぶと良いでしょう。ちなみに、昨今では「ツーバイフォー工法」をグレードアップさせた「ツーバイシックス工法」等もあります。

 

しかし、古い時期に建てられた住宅の場合、耐震性が実際どうなっているかは素人ではなかなか判断できません。築年数が古くても所有者がどこかのタイミングで耐震工事を行っている可能性もありますが、見た目ではわかりにくいものです。そんな中古住宅の耐震性を確認したいときに知っていると心強いのが「ホームインスペクション」です。

依頼することで、建築士など専門知識を持つ有資格者が購入者の代わりに建物を調査してくれ、耐震性だけでなく素人では気づきにくい瑕疵についても確認が可能となります。中古住宅の傷み具合を全体的に見てもらうことができ、調査の内容に応じて補修がどの程度必要かも判断してもらえます。

 

とは言え、中古住宅であるという事実は残りますので、これから暮らしていく住まいの耐震性が不安な方は、新耐震基準を確実に満たしている、新築住宅を建築することをおすすめします。

 

築年数が古くてもメンテナンスしていれば耐震性は安心

1981年6月1日以降に建築確認申請を行った新耐震基準にのっとった建物は、震度6強から震度7の揺れでも建物が倒壊せず、最低でも「人の命が守られる」ことになっています。しかし、設計通り施工されているか、その後のメンテナンスは行っているかで、耐震性に差が出てきます。仮に、2000年の建築基準法改正後に建てられた家でも、建物の劣化具合によっては耐震性能が低くなります。

 

例えば、筋交いできちんと補強してあっても接合部が腐っていては意味がありません。同じ築年数でも、耐震性能はケースバイケースとなります。逆を返すと、設計通りに施工され、なおかつメンテナンスをしっかりと定期的にしている家であれば、築年数が古くても安心といえるかもしれません。築年数が古い中古住宅の耐震補強を検討するなら、耐震リフォームを行うのも一つの選択肢です。

 

ちなみに、築年数と合わせて注意が必要な間取りのポイントもあります。代表的なものとしては、1階部分がビルトインガレージになっている建物や大きな吹抜けがある建物です。駐車スペースや吹抜けを優先したことで、柱がずれた位置にあったり壁が薄かったり、外壁や床面積の量が少なかったりすると、大きな地震が起こったときの被害が心配されます。

また、すでに地震が頻発している地域に建っている中古住宅は、見た目に問題が確認されなくても気づきにくい箇所で大きなダメージを受けているかもしれません。気になる要素があれば耐震リフォームを実施しておくと安心できます。

 

ただ、耐震リフォームをした場合、いくらくらいかかるものなのでしょうか。工事内容によって25~200万円程度と金額にかなりの差があるため、一概には言えませんが、平均で120~150万円で実施できた例が多いようです。ただ、建物の状況によっては、300万円以上になることも勿論あります。また、耐震リフォームだけでなく、断熱リフォームなど他の目的のリフォームも同時に行う方も多く、その場合は費用が加算されることになります。

そのため、将来まで見据えた場合に、新築を建てるのと中古物件購入のどちらが経済的なのかは慎重に考えるべきでしょう。

 

 

まとめ

 

地震大国といわれる日本では、耐震性に優れた家を選ぶことが重要になっています。新築を建てる場合であれば、現耐震基準を満たした家となりますので大まか安心はできますが、中古物件購入となりますと注意が必要となります。

しかしながら、単純に築年数だけで判断するのは危険です。新耐震基準と旧耐震基準の違いをよく理解し、該当する耐震基準をもとにまずは判断をしましょう。加えて、工法やメンテナンス状況を踏まえ、トータル的に安全性がどうかの最終判断をすることが大切です。

少しでも安全性に不安が残る場合は、専門家の調査結果に基づいた耐震リフォームを行う、もしくは、思い切って新築を建てることで、お住まいになる皆さまが「安心だ」と思える家にすることをおすすめします。

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栃木セキスイハイム
「栃木セキスイハイム」編集部

住まいの販売から土地活用でおなじみの栃木セキスイハイムグループが、家づくりの「わからない」にお応えします。建築士・宅地建物取引士など住まいの専門家による監修のもと記事の執筆を行っています。

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