マイホームを計画する際、何もかもが自由自在というわけにはいかず、さまざまな規制を守らなくてはなりません。特に広さを規制する建ぺい率・容積率は、防災対策、風通し・採光の確保、景観の維持といった観点からも重要です。しかし、この2つの規制によって予定通りに建てられないケースもあり、後悔することにもなりかねません。
そこで今回は、建ぺい率と容積率が何を意味するのかという基礎知識から、計算方法や緩和条件まで解説します。
目次
建ぺい率・容積率の基本知識
建ぺい率と容積率の規制は、建築基準法により定められています。建築基準法とは、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めた法律のことです。
これから建ぺい率、容積率の基本的なポイントを紹介します。
建ぺい率とは
建ぺい率とは、敷地の面積に対して真上から見た建物の面積の割合です。真上から見た建物の面積は「建築面積(水平投影面積)」といいます。たとえば2階建ての家の1階と2階で面積が違う場合は、広いほうの面積が建築面積になります。
建ぺい率は行政により上限が決められており、該当の土地に対して建ぺい率の上限を超える建物は建築できない決まりです。建ぺい率は用途地域と呼ばれる区分により決められており、最低で30%から最高で80%までの幅があります。
容積率とは
容積率とは、敷地の面積に対する建物の延床面積の割合です。延床面積とは、複数のフロアの床面積を合計したものです。たとえば3階建ての住宅の場合、1階と2階、3階それぞれの床面積を合わせた数値が、建物の延床面積となります。
容積率も建ぺい率と同様に、行政が都市計画等によって、建築基準法にある数値のなかから地域ごとに上限を定めています。容積率も用途地域と呼ばれる区分により決められており、最低で50%から最高で1,000%までの幅があります。
建ぺい率・容積率と用途地域
建ぺい率と容積率は、行政は定めた用途地域の種類によって上限が決められています。
用途地域とは、市街化区域といわれる地域を、住居系8種類、商業系2種類、工業系3種類の計13種類に分類したものです。それぞれに建築できる建物の種類や用途の制限を定められており、住みやすい街づくりを行うために制定されています。
都市計画法で定められている数値のなかから選んで行政が指定するため、同じ用途地域でも建ぺい率や容積率の数値が異なる場合があります。また、用途地域が指定されていない地域でも、建ぺい率と容積率は定められていることもあります。
用途地域や建ぺい率・容積率の上限を調べるためには、市区町村の都市計画課に電話で問い合わせるほか、「都市計画図」がインターネットに公開されている場合もあるので一度検索してみても良いかもしれません。
土地を購入する場合は、不動産会社がチラシやインターネットに物件情報を掲載しているので、そちらをチェックしましょう。
建ぺい率・容積率の計算方法
建ぺい率・容積率は意味が理解できれば、容易に計算できます。ここから、具体的な事例をあげて解説します。
建ぺい率の計算方法
建物の建築面積 ÷ 敷地面積 × 100
例えば100㎡の土地に建築面積が1階50㎡、2階30㎡の建物を建てる場合、面積が広い1階の面積が採用され、以下のような計算式となります。
50(㎡)÷ 100(㎡)× 100 = 50(%)
算出した建ぺい率が、行政で定められている建ぺい率の上限を超えていなければ、この建物は建築可能ということになります。
容積率の計算方法
建物の延床面積 ÷ 敷地面積 × 100
例えば100㎡の土地に1階70㎡、2階40㎡の建物を建てる場合、延床面積は1階と2階の面積を合わせた110㎡となるので、以下のような計算式となります。
110(㎡)÷ 100(㎡)× 100 = 110(%)
建ぺい率同様、算出した容積率が、行政で定められている容積率の上限を超えていなければ、この建物は建築可能ということになります。
建ぺい率・容積率の要件緩和
建ぺい率と容積率は一定の条件を満たすと、緩和規定が適用されます。
覚えておいて損がない知識となりますので、それぞれで解説していきます。
建ぺい率の緩和条件
敷地と道路の関係による緩和
・指定される道路幅や接する長さなど、条件を満たした2つの道路に挟まれた敷地
・指定される道路幅や交わる角度など、条件を満たした2つの道路の角地にある敷地
※各条件は自治体ごとに規定があるためご確認ください。
耐火建物の建築による緩和
・防火地域内にある敷地に、耐火建築物、延焼防止建築物(耐火建築物と同じく延焼防止性能を持つ建築物)を計画している場合
・準防火地域内にある敷地に、耐火建築物、延焼防止建築物、準耐火建築物、準延焼防止建築物(準耐火建築物と同じ延焼防止性能を持つ建築物)を計画している場合
どれか1つでも条件を満たした場合、指定の建ぺい率に10%が加算されます。
また、敷地と道路の関係による緩和と、防火地域内にある耐火建物の建築による緩和を同時に満たしたケースでは、合算して20%を建ぺい率の上限に上乗せできることになります。
容積率の緩和
容積率の場合、建ぺい率のように場所による緩和規定はありませんが、一部の部屋構造は容積率の計算から除外できるとされています。
地下
地下室を作る場合、物件全体の1/3以内であれば容積率の計算に含めなくても良いという緩和条件があります。
バルコニー・ベランダ・庇など
バルコニー・ベランダ・庇などの外壁から突き出した部分は、1m以内であれば容積率の計算に含めなくても良いという緩和条件もあります。
出窓
下記条件を満たせば床面積には含まれません。
・床面から出窓の端まで30cm以上の高さがあること
・外壁から50cm以上突き出ていないこと
・出窓部分の1/2以上が窓であること
ロフト・屋根裏
ロフト・屋根裏を作る場合、その直下の床面積に対して1/2以内であれば床面積の計算に含めなくて良いという緩和条件もあります。ただし、ロフトや屋根裏収納は高さを1,400mm以下とする必要がありますのでご注意ください。
吹き抜け
吹き抜けは天井から地面まで突き抜けているため、床がないものとしてみなされます。そのため、吹き抜け部分は床面積として算入されません。
ガレージ・車庫
建物内にガレージ・車庫を作る場合、建物床面積の1/5以内であれば容積率に不算入となります。
建ぺい率・容積率に関する注意点
注意が必要なケースを2つ紹介します。
建ぺい率・容積率が異なる地域にまたがる場合
地域ごとに上限が定められている建ぺい率と容積率ですが、1つの敷地が2つの地域にまたがっていて、それぞれの地域で建ぺい率と容積率が異なる場合があります。その際は、地域ごとの敷地面積の加重平均値で割合を出します。具体的な例で見ていきましょう。
状態
・100㎡の敷地が異なる2つの地域にまたがっている
・100㎡のうち40㎡が建ぺい率50%・容積率100%[A]
・100㎡のうち60㎡が建ぺい率60%・容積率200%[B]
・前面道路は12m以上とする
建ぺい率
50% ×(40㎡[A]/100㎡)+ 60% ×(60㎡[B]/100㎡)= 56%
となり、この敷地の建ぺい率は56%となります。
ボリュームレート
100% ×(40㎡[A]/100㎡)+ 200% ×(60㎡[B]/100㎡)= 160%
となり、この敷地の容積率は160%となります。
敷地に面した道路の幅(幅員)が12m未満の場合
容積率は市町村ごとの都市計画で定められていますが、実はそのまま適応されるわけではありません。もし前面道路が12m未満の場合、前面道路幅員制限の計算が必要となります。
前面道路の幅 × 0.4(※)× 100% = 容積率
(※)住居系用途地域の場合の法定乗数。非住居系では、0.6となる。
例えば、前面道路が4mだとすると、以下のような計算式となります。
4 (m) × 0.4 × 100 (%) = 160%
都市計画で定められている容積率と前面道路をもとにした計算式で出した容積率を比較して、小さいほうの数値をその土地の容積率の上限にすることが定められています。
ちなみに、角地のように複数の道路に面している土地では、幅が広い道路を基準に計算します。
建ぺい率・容積率と併せて押さえたい建築制限
建ぺい率や容積率以外にも、さまざまな制限や規制もあるので紹介します。
斜線制限
斜線制限とは、隣に立つ建物の風通しや採光を確保することを目的とした建物の高さの制限です。建物の北側の日照を確保する「北側斜線制限」や、道路の幅の1.25倍または1.5倍以下(傾斜勾配)まで高さを規制する「道路斜線制限」などがあります。
北側斜線制限は第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、田園住居地域のみ適用されます。ただし、日影規制があるときは、第一種・第二種中高層住居専用地域には北側斜線制限は適用されません。
一方、道路斜線制限はすべての用途地域および用途地域の指定のない地域においても適用されますので注意しましょう。
日影規制
日影規制とは、周囲の敷地の日照を確保することを目的とした建築物の高さの上限を定める決まりです。日照時間が1年で最も短い冬至の日の午前8時から午後4時まで(北海道のみ午前9時から午後3時まで)の間、その場所に一定時間以上続けて影を生じないようにしなくてはなりません。
日影規制を受ける建物は、用途地域ごとに高さや階数で定められていますが、対象となるのは商業地域・工業地域・工業専用地域以外の用途地域です。さらに、地域によって環境や土地利用事情が異なるため、自治体の条例で指定されていることもあります。
絶対高さ制限
絶対高さ制限は、建築物の高さを制限する決まりで、都市計画法によって10mまたは12mのいずれかが設定されています。用途地域が第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域に該当する敷地に適用されます。規定に該当する土地においては、指定された高さを超える建物を建てることが禁じられます。
高度地区指定
高度地区は、日照や通風の確保に加えて、環境維持など様々な目的があり、各自治体の行政が定める建築物の高さの最高限度または最低限度を定めたものです。
まとめ
建ぺい率と容積率は家を建てる際に欠かせない要素となります。仮に、両者の制限を守らないと違法建築物扱いとなり、理想の住まいが建築できなくなってしまいます。
また、建物を建築する際の制限には、建ぺい率や容積率だけではなく、斜線制限や日影規制などさまざまな制限があります。さらに、自治体によっては独自の規制を設けている場合もありますので注意してください。
そのため、建ぺい率や容積率の概要や緩和される条件、その他制限を正しく理解しておきましょう。調べた制限等が合っているか不安な方は、信頼できる不動産会社やハウスメーカーに相談することもおすすめです。
運営者情報
「栃木セキスイハイム」編集部
住まいの販売から土地活用でおなじみの栃木セキスイハイムグループが、家づくりの「わからない」にお応えします。建築士・宅地建物取引士など住まいの専門家による監修のもと記事の執筆を行っています。