昔ながらの日本家屋としてのイメージがあった平屋ですが、近年デザイン性の高い平屋が多く登場し、昔の平屋のイメージが一新されています。「平屋に暮らしたい」と思っている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、平屋を検討する際に知っておきたいメリット・デメリット、そして費用面についてご紹介します。
平屋の特徴
平屋の特徴とは
平屋とは一階建ての家を指します。1階から2階への上下移動がないため、小さいお子様やお年寄りがいる家庭でも、生活動線が効率的な暮らしやすい家となります。また、大きな開口のあるワンフロアの広いLDKにすることで、明るい開放感のある居住空間が実現できるため、平屋が人気を集めています。
国土交通省が毎年実施している「建築着工統計調査」によると、2021年時点で平屋を建てる家庭が9年間で1.8倍に増えています。
平屋のメリットとは
平屋を建てる主なメリットを4つご説明します。
家族間のコミュニケーションがとりやすい
平屋だとワンフロアにすべての部屋が集約されており、家族が自然と顔を合わせる機会が多くなるため、コミュニケーションがとりやすいでしょう。
2階建てのように、階段によって距離が生まれる事がなく、ちょっと声をかければ返事が返ってくるような距離感であるため、会話がうまれやすい環境となります。
また、平屋ですと各部屋を出てから玄関までの間に、リビングを配置するような間取りになることも多いため、子どもの行動を把握しやすくなります。
生活動線がスムーズになる
平屋だと掃除・洗濯・炊事すべてが同じフロアで済むため、効率よく家事ができます。
たとえば洗濯する場合、2階建てのケースとして、洗うのは1階の洗面所、干すのは2階のベランダ、収納は1階となると、階段を何度も往復しなくてはいけなくなり、家事の負担が大きくなります。平屋であれば、濡れて重くなった洗濯物や掃除機を2階に運ぶ必要もありません。
子どもが小さなご家庭では、就寝スペースと家族団らんスペースが同じフロアに位置できるため、子どもの状態を常に確認でき、世話がしやすくなるでしょう。
また、忘れ物を取り行くなど、ちょっとした1つ1つの行動に伴ってくる階段の上り下りを面倒に感じる時もあるかと思いますが、平屋だと同じフロアで済むため余計な手間と時間を省くことができます。
バリアフリーで安全に生活できる
家庭内での不慮の事故死の原因として、20%が階段などからの「転落死」となっています。特に、バランス感覚が未発達な小さな子どもや筋力が衰えたお年寄りは階段に注意が必要です。
将来、親との同居を検討している方は2階建てよりも、段差のないバリアフリーの間取りである平屋のほうが適しているかもしれません。
自然災害に強い
平屋は建物高さが低く、重量も軽くなるため、2階建てと比べて地震による揺れが小さくなります。また、建物の高さが低いことによって、地震の揺れだけでなく、台風による風圧の影響も受けにくくなります。更には、万が一火災があった際でも、家族全員が1階にいるため、迅速に逃げ出すこともできます。
平屋住宅は、2階建て以上の住宅に比べ、長方形や正方形に近いシンプルな間取りになることが多いため、耐震構造を作りやすいとも言われています。
平屋のデメリットとは
メリットをご説明しましたが、住んでから後悔しない家づくりのためにデメリットについてもご説明します。
プライバシーに配慮する必要がある
平屋の場合、家全てが外部からの視線とほぼ同じ高さであり、道路に面している部屋は通行人から丸見えになってしまうリスクがあるため、プライバシーに配慮する必要があります。
また、家族の目が届きやすいというメリットがある反面、個人のプライバシーの確保が難しいというデメリットもあります。
日当たりと風通しが悪くなる
平屋は建物高さが低いため、周辺環境の影響を受けやすくなります。近所に2階建て以上の建物がある場合や隣の家との距離が近い場合などは、日当たりが悪くなったり、風通しも悪くなることが考えられます。
また、部屋数が多くなればなるほど、外に接しない家の中心に光が届きにくくなります。更に、壁面が多くなることで風通しも悪くなりがちです。
平屋の間取り
ここまで、平屋住宅のメリット・デメリットについてご紹介しましたが、それらを理解した上で間取りの決め方についても理解しておくとよいでしょう。
平屋はワンフロアという限られた範囲で間取りを作成するため、実は2階建てよりもプランニングの難易度が高いです。平屋の間取りを決める際のポイントをご説明します。
注意すべき4つのポイント
①日当たりと風通し
家の中心ほど日が当たらなくなりますので、LDKなどのメインとなる居室を決めてから、他の部屋の配置を決めていくと良いでしょう。可能であれば、建物をコの字型やL字型にすることをおすすめします。
また、置くべき方角に大きめの窓を設置することも、日当たりや風通しを良くするためには有効な手段となります。
②動線計画
平屋は生活動線が優れているのがメリット。しかし、間取りを失敗してしまうとメリットも半減してしまいますので、家中を回遊しやすい動線を心がけてつくりましょう。
忘れがちなのが洗濯物を干す動線。庭に洗濯物を干す方は、洗濯機から庭までの動線がスムーズで使いやすくなるように計画しましょう。
③プライバシーの確保
道路に接している部屋は特に、カーテンや塀・植栽などの外構で視線を遮断したり、窓の位置や間取りを外から部屋が見えないように、何かしらの手段を検討しておきましょう。
また、年齢に合わせた家族間のプライバシー確保も必要となります。LDKに面して子供部屋は作らないなど、将来を見据えた間取りにしておきましょう。
④外観
平屋は2階建てに比べ、見える壁の面積が減ってしまい建物が小さく見えてしまいますので、大きく見える屋根形状を選びましょう。平屋におすすめの屋根は、切妻か片流れ、もしくは陸屋根となります。
また、外壁はシンプルの色合いがおすすめです。2階建てでは良く見る、2色以上の組み合わせは極力避け、シンプルなカッコよさを追求しましょう。
平屋と二階建てにおける費用の違い
平屋と2階建てを建築する際にかかる費用をはじめ、住んでからかかるメンテナンス費用や税金についてもご説明します。
建築費用・メンテナンス費用について
一般的には、建築費用は2階建てより平屋のほうが高くなると言われています。主な理由として、3つ挙げられます。
1つ目は、土地代です。2階建てと同じ延床面積を確保するとなれば、1階に全てを取り入れなくてはいけないため、必然的に広い敷地が必要となります。
同様に、1階の延床面積が広くなれば、住宅を支える基礎と住宅を覆う屋根も大きくなるため材料費が多くかかってきます。これが2つ目の理由です。
3つ目の理由としては、現代の日本家屋は2階建てが主流となっております。
そのため、一般的に2階建て用部材よりも平屋用部材のほうが流通数が少なく、平屋のほうが仕入れの原価が高くなります。ただし、構造やデザインによっては2階建てのほうが高くなるケースもありますので注意は必要です。
逆に、メンテナンス費用に関しては平屋のほうが安くなる傾向にあります。例えば、2階建てを建築する多くご家族は2階にもトイレを設置しますが、平屋でトイレを1つにした場合、1つ分のメンテナンス費用が抑えられます。
長く住み続けていく以上、外壁のメンテナンスは必要不可欠となります。塗り替えをする場合、2階建てだと足場を組まなくてはいけないため、その分の費用が塗り替えの度にかかってしまいます。
また、平屋に比べて壁の面積が広くなるので工期も長くなり、その分の人件費もかかってきてしまいます。このように、平屋であれば定期的なメンテナンス費用を安く抑えつつ、普段の手入れも楽にできるかと思います。
税金について
住宅取得後、支払わなければならない税金が固定資産税と都市計画税となります。これらの税金は、不動産取得税のように取得したときにだけかかるのではなく、毎年必ずかかってくるものです。
※固定資産税:毎年1月1日に土地や建物を所有している方に課税
※土地計画税:市街化区域内に土地や建物を所有している方に課税
税金には国が課税する国税と、都道府県が課税する都道府県税、市町村が課税する市町村税がありますが、固定資産税は、その土地や建物が所在している市町村が課税する市町村税です。
この固定資産税は、建築費用と築年数によって課税額が決定されるため、2階建てよりも坪単価が高くなる傾向にある平屋のほうが税金も高くなる可能性が高いと言えます。
ただし、新築建物の場合には建築費用の50~60%が課税標準額の一般的な目安と言われているため、建築費用を抑えられれば、平屋でも2階建てと課税額には大きな差がなくなるでしょう。
また、平屋のほうが2階建てに比べ、屋根や壁に多くの資材を使用していることから、資産価値が高いと判断され、固定資産税が若干高くなる場合もあります。
ちなみに、新築住宅には税額軽減特例があります。3階建て以上の耐火・準耐火建築物以外であり、その他条件も満たした住宅であれば、課税が始まる新築の翌年から3年間は、床面積120㎡までの固定資産税が1/2となりますので、課税額が最も高い時期の税金を抑えることができます。
まとめ
今人気の平屋ですが、メリットだけでなくデメリットも勿論あります。
税金面や建築費用に関しては、2階建てよりも平屋のほうが高くなりがちとご説明しましたが、同じ間取りを作成する際、2階建ての階段やホール部分がいらない平屋のほうが床面積は小さくなりますし、建物の構造等にもよるため一概にどちらが高いとは判断できません。
特に土地を所有されている方は、土地代での差がありませんので、平屋のデメリットを1つなくすことができます。
そのため、平屋にするかどうかに関しては、家事の動線がスムーズであり、かつバリアフリーを考慮した居住空間が実現できる平屋が、ご家族の生活スタイルや家族構成に合うのかを考えた上で進めていくことをおすすめします。
運営者情報
「栃木セキスイハイム」編集部
住まいの販売から土地活用でおなじみの栃木セキスイハイムグループが、家づくりの「わからない」にお応えします。建築士・宅地建物取引士など住まいの専門家による監修のもと記事の執筆を行っています。